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「退歩的文化人」のススメ

「退歩的文化人」のススメ_b0020735_1258176.jpg「退歩的文化人」のススメ


嵐山光三郎
新講社
2004年9月9日発行

1429+税

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# by book_cafe | 2005-02-11 13:30 | __ 書物棚
ヴィレッジヴァンガード再考
ひさしぶりに投稿。

ブックカフェの物件探しに少し動きがあって、バタバタしていました。
構想はそれなりに立てていたつもりだったけど、いざ物件を目の前にすると、より具体的に考えられるということで、書類を作ったり、電卓をたたいてみたり、人に会って話を聞いたり、と濃い日々でした。
に、加えてひさしぶりに編集のシゴトの依頼も。働いている時間なんてないよぉ、なんて気分ではありますが、稼ぐ必要もあり・・・と打合せに出向いたり、企画を考えたり、あれこれと机上に向かう日々でもありました。

そんな間に読んでいた本。『菊池君の本屋~ヴィレッジヴァンガード物語』(永江 朗著)。
以前から読みたいと思っていたけど、地元の書店の棚にはなくて、いつの間にか忘れていて。先日、ブックオフの100円コーナーで見つけて、さっそく購入。
おもしろかった。
「本屋、はじめました」的な本は、それなりに読んでいたけど、これはとっても参考になったな。
ヴィレッジヴァンガードのことだから、っていうのもあるかもしれない。やっぱり独特だから。
初版が1994年。もう10年以上も前になるのに、色あせてないんですよね、考え方が。
それだけ、書店業界というのは旧態依然としているわけなのね、きっと。

今現在は小さなブックストアがあちらこちらにあって、また少し、業界が動いている気がするけど、ヴィレッジヴァンガード以降、新しい考えを持って業界に新風を送ってくれる本屋はできていないような気がする。

Ⅰ章の永江さんのリポートも突っ込んだものだったし、Ⅱ~Ⅵ章の菊池さんの語りも、具体的で参考になるものだった。Ⅶ、Ⅷ章は「経営戦略」をテーマにした対談。ブックガーデン(!?)の販売部長である江口さんという方との対談では、「菊池さんの店っていうのは、エディター感覚、エディターシップを楽しんでいるよね」と。編集する本屋、というワードが登場してた。
リブロの今泉さん×菊池さんとの対談では、今泉さんが「空間全体に味わいがある」とヴィレッジヴァンガードを評していましたよ。
ヴィレッジヴァンガード的な空間を好きか嫌いかは別として、書店という空間にも味わいがあってしかるべし、とわたしもすごく思う。(つねづね、古本屋のほうが居心地がいいと感じていたのは、そういうわけだったのかもしれないな・・・)
「読者が本屋に入って、あるイメージを受ける、感動を受けるというのは、単純に商品を見つけて買うということだけではありませんね。むしろ、その商品を置いてある書店が気に入るかどうかが重要です。それは本の配列が十進分類法的に整然としているというよりも、棚全体がまとまって何を表現しているかということで。それが読者にとっては『よく揃っている』という言い方になるのでしょう」
とも話していた。ふむふむ、です。往来堂書店にもつながるはなしですよ、これは。

カフェの空間の中に、本の棚を作ろうと考えている(本屋の空間にカフェを作ろう、にはならないあたりが残念ですが)、、これからのわたしにとっては、とても気にある言葉でしたよ。ほかにも印象深い話や考え方がたくさん。
ひさしぶりに行ったブックオフで、めぐり合うべくしてめぐり合ったという感じの一冊。折をみては、ページを開くような気がする。
# by book_cafe | 2005-02-07 01:10 | __ note 「... 」
『雨はコーラがのめない』 江國香織
犬と暮らしたくなったー。

タイトルがヘンです。意味が通じない。
江國香織さんは、彼女に書く恋愛小説に一時ハマって、ずいぶんと読んで、少し飽きて。しばらく読んでいなかった。先日図書館に行ったときにふいと見かけて、ひさしぶりに読んでみるかと借りてきた。
コーラ色の表紙。
小説ではなくてエッセイだったんだけど、よかった。さらりとしているのに深くて。

「雨」と一緒に音楽を聴き、窓を眺め、散歩に行き、ワインを飲み、おしゃべりをする。そんな日常のこと。
この人の無駄がなく凛とした言い回しが好きだった、ってことも思い出した。


雨はコーラがのめない
江國香織
大和書房
1200+税
# by book_cafe | 2005-01-27 14:39 | __ 小説帖
『ニシノユキヒコの恋と冒険』 川上弘美

うーん、ひさしぶりの川上弘美。

あいかわらず書名が目を惹く。
女を好きになってもセックスをしても、芯のところで人を愛することができないと感じている男、ニシノユキヒコの10代から50代まで、彼と交わっていく10人の女性の視点で語られる連作短編。

ニシノユキヒコは、とらえどころがないやつ。だけど誠実で、正直なやつで、とても優しい。
ニシノユキヒコのとらえどころのなさは魅力でもあるが、でも、そのとらえどころのなさは、彼女たちにとっては苦しいものだったり切ないものだったり。だから、一様にニシノユキヒコを嫌いになったわけじゃないけど別れる、という選択をする。
女も寂しいが男も寂しい。

ほんとうのところは、誰にもちゃんとはわからないことなんだろう、恋とか愛とか、そういうもののことを川上弘美はこの作品で書いていると思う。
そしてあいかわらずの、川上節。ぼんやりとした余韻を残して、いい味わい。


ニシノユキヒコの恋と冒険
川上弘美
新潮社
1400+税
# by book_cafe | 2005-01-23 15:26 | __ 小説帖
『ビタミンF』 重松清
ビタミンというより、温湿布のような。

Family、Father、Friend、Fight…とFで始まるキーワードを盛り込んだ短編。2000年、124回目の直木賞受賞作品。

家族の物語を大きなテーマに持っているという重松さんらしい作品。前書きで、「――結局はFictionであり、乱暴に意訳するなら「お話」の、その力をぼくは信じていた」と作者が語っていたけど、その言葉もまたいいなあと思った。
どの作品も、さすがだと思う話しの流れ。遠からずのリアルな空気感が心の中のどこかの焦点と合って、ぐいと惹き込ませるものがある。
ビタミンというより、温湿布みたいにじんわりあったかくなって、痛みとか疲れとかをゆっくり癒してくれる感じ。

ビタミンF
重松清
新潮社
1500+税
# by book_cafe | 2005-01-23 14:28 | __ 小説帖